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相続税解説シリーズ②

相続税が課税されるのはどの人まで?そしていくらかかるのか?

相続税解説シリーズ2回目の今回は、相続税納税義務者と負担割合をテーマに解説をします。
相続税は相続により財産を受け取った場合、財産を受け取った相続人に課税されますが、相続人は1人とは限らず普段あまりコミュニケーションを取ることがない関係の人が絡むことも多くあります。
また、相続税の課税対象となる相続人は、必ずしも実際に遺産分割協議などで財産を直接引き継いだ人だけではなく、実質課税の観点から実質的に財産相続に当たるケースもあり、相続が発生した場合に「気が付かないことろで税金がかかった」ということがないよう事前に知識を押さえておくことが重要です。
今回の解説ではこのほか、相続放棄をする場合や限定承認をする場合の相続税の取り扱いについても説明いたします。相続の方向性に合わせて税金はどのようになるのか知るきっかけとなれば幸いです。

相続人と相続税納税義務者の再確認

前回の解説で説明したとおり、相続税の納税義務者は相続税法第1条の3第1項に規定されており、「相続又は遺贈により財産を取得した者」です。一方、相続を受ける人、つまり「相続人」となる人の範囲については民法887条から890条にかけて規定されており、
・配偶者(相続順位1位)
・子(相続順位1位、相続時既に死亡している場合はその子の子)
・親(相続順位2位)
・兄弟姉妹(相続順位3位)
となっています。ただし、相続人となれない場合があり民法891条に
・故意に被相続人または相続順位が同順位以上の者を死亡させ(未遂含む)、刑に処された者
・被相続人が殺害されたにもかかわらず、その事実を告発しなかった者(配偶者・直系血族等を除く)
・詐欺や脅迫により、被相続人の遺言を撤回・取消・変更した、またはさせた者
・被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者
と規定されています。相続人となれない者は当然相続財産を受取る資格がありませんので、仮に相続人とならないことが判明する前に財産を受取ったとしても相続税の納税義務はありません。

遺贈とみなし相続財産

相続では被相続人が所有していた財産を相続人が相続し財産を引き継ぎますが、相続税法の課税対象は「相続又は遺贈により財産を取得した者」であり、遺贈による財産の取得も相続税の課税対象です。遺贈とは、「ある人の死亡時に贈与する約束(遺言)である人から別の人へ財産や権利を贈与すること」です。つまり、被相続人の財産が相続人以外の人に引き継がれた場合、その相続人以外の人にも相続税がかかります。また、この場合の税額は相続人の税額の2割増しとなります(相続税法第18条)。
また、民法上の相続財産に該当しない場合でも相続税がかかる場合があり、死亡保険金や死亡に伴う退職金が該当します。これらの財産を「みなし相続財産」といい、詳細は後の回で説明します。
遺贈も無償の財産受取だけでなく、著しく低い価額での購入の場合も相続税がかかることがあります。

遺言、遺留分と家族信託

万が一の相続に備えて予め遺言を残し、相続財産の行き先を決めることがあります。遺言には①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3種類が民法で定められています。今回は相続税に関する説明のため、3種類の遺言の違いについては割愛しますが、遺言通りに遺産分割された場合、各相続人または遺贈の受遺者の相続税負担割合も遺言通りになります。
遺言に対して兄弟姉妹以外の相続人は一定の割合の遺留分に対する金銭を他の相続人に請求し、相続財産の取り分の確保をすることができますが、この場合精算する金銭は遺留分を請求した相続人の相続財産とみなされます。
近年、被相続人が認知症になって判断能力が低下することが増加していることから、相続対象財産で構成される家族信託を立ち上げ確実に相続したい者に相続できるようにすることがあります。家族信託については信託受益者という信託財産からの利益を得る人に課税されることになっており、当初の受益者が被相続人で相続により相続したい相続人に受益者が移る信託契約の場合相続税がかかります。この場合、信託構成財産は他の相続財産と一緒に相続税法上の相続財産とみなして相続税が課税されます。

遺産分割がまだの場合の遺産分割割合

争族状態になっている場合、遺産分割協議が長引き相続税申告期限の相続開始後10ヶ月に間に合わないことがあります。このような場合でも申告期限の延長は認められておらず、相続開始後10ヶ月以内に一度申告と納税をすることになります。
遺産分割協議が整っていない時点で申告する場合各相続人の相続税負担割合をどのように決定するかが論点となりますが、民法900条に規定されている法定相続分で相続財産が按分されたものとみなして決定されます。ただし、この相続財産には遺産分割協議の対象外となる死亡保険金や支払先の決まっている死亡退職金、家族信託は含まれず、これらの相続財産は指定された相続人のみに帰属する相続財産として相続税を負担することになります。

外国籍の相続人がいる場合は?

前回も説明しましたが相続時点で日本国内に過去10年内に居住実績がある外国籍の人は、被相続人が日本国内に過去10年以上居住実績がない外国籍の人でない限り、日本の相続税の納税義務者となります。納税割合の計算も日本国籍の被相続人の場合は日本の民法に従って決定した遺産分割結果に基づいて決定されます。
一方、日本国内に過去10年以内に居住実績がある外国籍の被相続人からの相続財産の各相続人への按分割合については、やや複雑な論点があります。それは、遺産分割協議が整わないまま相続税の申告・納税期限を迎える場合相続税申告に用いる各相続人の法定相続割合をどの国の法律で決めるかです。国税庁への照会回答によると、法定相続割合については被相続人の本国つまり国籍を有する国の法律に従った法定相続割合を用いることとされています。

相続の放棄・限定承認と税金との関係

相続時に相続放棄をしたり、相続財産の限度でのみ借金を引き継ぐ限定承認をするケースがあります。ここでは、相続放棄と限定承認の場合の法人税について説明します。
まず、相続放棄の場合ですが、相続放棄をすると相続人資格を失い財産を受取ることがなくなるため、相続放棄した人に対して相続税はかかりません。ただし、相続税計算における控除計算においては放棄した人も相続人の一人とみなして計算します。詳細は後の回で追って説明します。
一方、限定承認の場合ですが、税法上は相続ではなく被相続人から相続人へ時価で譲渡したとみなし被相続人の所得税の対象となります。この場合、準確定申告によって申告・納付することになります。詳細は次回説明します。

まとめ

今回は相続税納税義務者と負担割合についてお話しました。相続のパターンはその人、その時によって異なることからその時々に対応できる規定が設けられています。また、相続は実際に発生する時期が不確実であるため、事前対策として遺言や信託に関する相続税の関係についても触れました。
今回の記事をお読みになった方が相続税に関して当事者意識をお持ちいただく一つのきっかけとなりましたら幸いです。