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相続税解説シリーズ①

相続税の基本事項を押さえましょう!

今回から3か月ほど10回に分けて、相続税について解説シリーズをアップ致します。
相続税は、所得税や消費税、法人税等と異なり、相続時のみ発生する触れる機会が少ない税金である上に納税義務者が複数となり、申告までの調整が煩雑になります。また、申告期限が被相続人の死亡つまり相続から10か月以内と短期間です。
そこで、この解説シリーズは相続税についてよくある事項について解説し、万が一の相続に前もって準備できるようにすることを目的としています。相続税の性質上意味が分かりにくい点もありますが、できる限り言葉をかみ砕いてわかりやすく解説するよう心掛けますので、よろしくお願いします。
このシリーズでこの記事をご覧の皆様の相続税に関する理解が深まれば幸いです。

このシリーズの構成

このシリーズは10回を予定しております。各回のテーマは以下の通り予定しております。
第1回(今回) 基本事項
第2回    納税義務者
第3回    (準)確定申告
第4回    現金・預金
第5回    不動産
第6回    有価証券
第7回    退職金・生命保険
第8回    債務・葬儀費用
第9回    税率・控除制度
第10回    事業承継特例
各回のトピックは基本的な事項の解説とし、相続税とはこんなものなのかというざっくりしたイメージを持っていただくことを想定しています。内容についてもう少し詳しく知りたい方は、お問い合わせメールなどから個別にご相談ください。

相続税の納税義務者

最初に相続税の納税義務者つまり、相続税を払う必要がある人について解説します。相続税の納税義務者は相続税法第1条の3第1項に規定されています。条文をかみ砕いて説明すると、「相続又は遺贈により財産を取得した者」です。
もちろん世界中の相続人が日本の相続税納税義務者ではなく、
・相続または遺贈の時点で、日本国内に過去10年以上居住実績がない外国籍の人
・相続または遺贈の時点で日本国内に過去10年以上居住実績がない被相続人(相続対象となる死亡者)からの相続または遺贈
は日本の相続税を課税されません。
「過去10年以上」の非居住要件がある理由は、実態は日本国内で居住・活動しているにもかかわらず、国籍を形式的に外国籍にして課税逃れを図るケースがあり、その課税逃れを防止するためです。相続税など資産税は税金の中でも国際的規模での課税逃れが多く、厳しい要件となっています。

相続税の計算

相続税の計算式は簡単に示すと以下の通りで、まず相続人一人一人ではなく、1回の相続全体つまり相続人全員の合計額を計算します。
相続人全員の相続税総額=(相続財産全体の評価額ー相続全体債務の評価額ー葬儀費用ー基礎控除額)×相続税率

相続人全員の相続税総額を計算した後、各相続人の相続税額を以下の通り計算します。
各相続人の相続税額=相続人全員の相続税総額/(相続財産全体の評価額ー相続全体債務の評価額ー葬儀費用)×(当該相続人の相続財産の評価額ー当該相続人の相続債務の評価額ー葬儀費用のうち当該相続人負担額)ー各種税額控除

なお、遺贈(相続対象外の人に対する死亡に伴う財産贈与)により財産を取得した人の場合、上記の各相続人の相続税額に20%の加算があります。

相続税の申告・納税

相続税申告書の提出期限は、相続の開始があったことを知った日(被相続人が死亡した日)の翌日から10ヶ月を経過する日までとなっており、相続人(遺贈者)一人一人が実際に住んでいる住所地を管轄する税務署に提出します(相続税法第27条1項)。ただし、提出の効率化を図るため、相続人が複数名で管轄する税務署が同一の場合は相続人一人一人が個別に申告書を提出する必要はなく、同一の税務署に提出する相続人が共同で一通の申告書を管轄の税務署に提出することができます(相続税法第27条5項)。
もっとも、2019(令和元)年10月よりe-Taxによる相続税の申告ができるようになり、各相続人の申告を1か所で短時間に行うことができます(リンク参照)。
相続税の納付は上記の申告期限までに行います(相続税法第33条)。各相続人に当該相続人の税額分だけ納付するのが原則ですが、相続税額の総額について相続人全員が連帯して納付する義務があります(相続税法第34条)。また、納付は現金一括納付が原則ですが、一回の税額が多額になることから年賦延納制度(相続税法第38条)や、不動産・有価証券等による物納制度(相続税法第41条)があります。

申告期限までに分割協議が整わなかった場合や申告後に新たな相続財産が判明した場合はどうする?

申告期限は相続の開始があったことを知った日(被相続人が死亡した日)の翌日から10ヶ月を経過する日までですが、場合によっては遺産分割協議が申告期限までに整わず、各相続人の相続税額が判明しないケースもあります。また、申告後に遺言書や相続財産が見つかるケースもあります。
当初申告後に新たに相続財産が見つかり、相続税額の追加がある場合は期限後申告を行います(相続税法第30条第1項)。
遺産分割協議が申告期限に整わない場合、整うまで申告を先延ばしすると加算税や延滞税がかかるため、いったん期限内に法定相続分で財産を按分したとみなして各相続人の相続税額を計算して申告・納付します。その後分割協議が整った段階で実際の取得額割合で按分した各相続人の相続税額を計算し、税額の修正に関する更正の請求手続を行います。なお、この場合更正の請求は分割協議が整った日の翌日から4が月以内に行う必要があります(相続税法第32条第1項)。

二次相続も念頭に置きましょう

相続は1回にとどまらず例えばお父様が亡くなり、お母様が財産の一部を相続した場合、お母様が亡くなった際にも相続が発生することがあります。このケースでお父様、お母様それぞれが亡くなったときにご子息様が財産を相続した場合、2回相続税が発生することがあります。
このように財産の相続に当たっては複数回相続税がかかる可能性があることも考慮してお話されるとよいでしょう。相続税は一度にかかる税額が多額になることが多いため、できれば生前に万が一の相続について協議しておくことがおすすめです。

まとめ

今回は相続税の基本事項について説明しました。相続税は一度に係る金額が多額でなおかつ複数の関係者が絡むため、事前の協議や整理がスムーズな相続税申告・納付と遺産整理につながります。また、相続税は多額になる負担を軽減するための制度がいくつかあります。
次回以降、財産や控除制度など詳細な論点について解説致します。事前の協議や整理に役立てられますと幸いです。