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【令和4年6月リライト】相続税解説シリーズ⑦|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

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2022/06/27

目次

    はじめに

    相続税解説シリーズ第7回目の今回は退職金と生命保険の税金について相続税だけではなく税金全般について解説します。退職金と生命保険は受取りが一時で多額に入るものであり、受取事由によって税金の取扱いが異なります。特に生命保険は保険料・保険金共にその時の状況によってかかる税金も大きく変わるため、税金の取扱いについて正しい理解が必要です。
    今回のテーマを通して生命保険と退職金の税金について理解いただけますと幸いです。なお、各回のテーマは以下の通りです。今回リライトした内容は令和4年6月現在の法令に基づいています。
    第1回 基本事項
    第2回 納税義務者
    第3回 準確定申告
    第4回 現金・預金
    第5回 不動産
    第6回 有価証券
    第7回(今回) 退職金・生命保険
    第8回 その他財産・債務・葬儀費用
    第9回 税金計算・控除制度
    第10回 事業承継特例
    番外編 贈与税

     

    みなし相続財産

    第2回目で軽く触れましたが、相続税課税対象となる財産は遺産分割協議の対象となる民法上の相続財産だけではありません。税法は実質主義であり、実質的に被相続人から相続人に財産が移転していると認められる財産も相続財産とみなして課税されます。このような財産を「みなし相続財産」といいます。
    「みなし相続財産」は相続税法第3条第1項に以下の通り規定されています。
    1.被相続人の死亡により相続人その他の者が受け取る生命保険金(共済金)または損害保険金(共済金)のうち、被相続人が掛金を負担した部分
    2.相続人その他の者が、被相続人に支給されるべきであつた退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(死亡に伴う各種年金制度の一時金など)で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定し支給を受けたもの
    3.相続時にまだ保険金支払事由が発生していない生命保険契約で、被相続人が掛金の全部または一部を負担する一方、被相続人以外の者が当該生命保険契約の契約者である契約の相続時までの掛金のうち、被相続人が掛金を負担した部分
    4.相続時にまだ支給事由への該当がない定期金(個人年金保険など)契約で、被相続人が掛金の全部または一部を負担する一方、被相続人以外の者が当該定期金契約の契約者である契約の相続時までの掛金のうち、被相続人が掛金を負担した部分
    5.定期金給付契約で定期金受取人である被相続人が死亡したときにその死亡後遺族その他の者に対して定期金または一時金を給付する契約に基づいて相続人が当該定期金または一時金受取人の受給資格を得た場合の当該受給金額のうち、被相続人が掛金を負担した部分
    6.被相続人の死亡により相続人その他の者が定期金(これに係る一時金を含む。)に関する権利で契約に基づくもの以外のもの(恩給法の規定による扶助料に関する権利を除く。)を取得した場合においては、当該定期金に関する権利を取得した者について、当該定期金に関する権利
    なお、死亡以外の事由による保険金の受取りや退職金の受取りについては所得税または贈与税がかかります。後ほどパターン分けをしたうえで、課税される税金の種類と計算方法について解説していきます。

    生命保険のしくみ

    ここからは生命保険の税金について解説していきます。具体的な税の取扱いの前に生命保険の仕組みをおさらいします。生命保険は死亡、病気、けがなどによる経済的な損失をカバーするため、多くの人がお金を出し合い、万が一の死亡、病気、けがなどの際に保険金を払う仕組みです。下記リンクもご参照ください。
    保険は保険を契約して保険料を支払う保険契約者、保険の対象者となる被保険者、万が一の時に保険金を受取る保険受取人がおり、3つの当事者は個別に決まります。例えば自分が死亡した時の備えのために妻が保険金を受取る保険を契約した場合、保険契約者は本人、被保険者も本人、保険受取人は妻となります。
    税金の課税は保険契約者と保険受取人との関係、そして死亡、病気、けがなど保険金支払事由となる事象(この事象を保険事故といいます)によって判断します。
    なお、先ほどのみなし相続財産に該当する項目の中で3.保険契約者が被相続人以外で負担者が被相続人となっている生命保険契約のうちまだ保険事故が起きていない契約がありましたが、これは実際に掛金を拠出していたのが被相続人で契約の名目上保険契約者が掛金を負担しているケースを指しており、第4回でお話した名義預金第6回でお話した名義株と類似した相続財産です。

    生命保険協会HP 生命保険の基礎知識 STEP. 1 生命保険ってどんなもの?
     

    生命保険料の税金

    生命保険は受取保険金が所得または益金として所得税や法人税が課税される一方、保険料や掛金は税金を減らす要因となります。
    具体的には、
    ・個人で契約した保険料または掛金:支払った年に生命保険料控除として所得税の控除対象
    この保険料控除は扶養家族が契約人の保険料を世帯主が負担した場合、世帯主の所得税の控除対象にすることができます。ただし、この場合扶養家族本人の所得税の保険料控除は適用できなくなります。
    ・会社など法人で契約した保険料または掛金:原則経費になるものの保険金や解約返戻金が法人に入る場合全部または一部を積立金として資産計上
    積立金として資産計上する割合は最大返戻率などを考慮した計上割合で、2019年(令和元年)に節税保険対策で見直され厳格化されました。資産計上割合は以下の通りです。
    1.養老保険(満期または中途解約時に保険金が支給される生命保険):掛金を全額資産計上
    2.定期保険(死亡以外に保険金が支給されないいわゆる掛け捨て)及び第三分野保険(医療、介護、入院保険など):掛金を全額経費計上
    3.2.の保険に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合

     

    最高解約返戻率資産に計上する期間

    資産に計上する期間
    資産計上額 資産を取り崩す期間
    50%以下 なし(期間経過に応じ経費処理)
    50%超70%以下 保険期間開始日~当該保険期間の40%経過日 当期分支払保険料×40% 当該保険期間の75%経過日~保険期間終了日
    70%超85%以下 保険期間開始日~当該保険期間の40%経過日 当期分支払保険料×60% 当該保険期間の75%経過日~保険期間終了日
    85%超

    保険期間開始日~最高解約返戻率が終了する日
    (ただし当該期間が5年未満となる場合は保険期間開始日から5年間(保険契約期間が10年未満の場合は保険期間開始日~当該保険期間の50%経過日))

    当期分支払保険料×最高解約返戻率×70%
    (保険期間開始日から10年経過するまでは当期分支払保険料×最高解約返戻率×90%)
    資産計上期間終了日~保険期間終了日


    なお、法人契約の生命保険の受取人が役員である場合掛金は支払時に役員賞与とされ法人税における損金算入制限や役員個人の給与所得課税の対象となり、部長課長など特定の従業員である場合支払時に従業員給与として経費となり対象となる従業員の給与所得課税対象となります。
     

    生命保険金の税務と相続税の取扱い

    回りくどい説明になりましたが、ここから生命保険金を受取ったときの税金の取扱いを説明します。
    保険契約者、被保険者、保険事故の内容、保険受取人の関係に着目して以下整理します。
    1.保険契約者と保険受取人が同一人(被保険者、保険事故は問わない)の場合:所得税の一時所得
    保険契約時に死亡保険金受取人を被保険者とすることができないため、本人受取は除外しています。
    2.保険契約者と被保険者が同一人でその人の死亡に伴い別の保険受取人が保険金を受取る場合:相続税
    3.保険契約者と被保険者が同一人で死亡以外の保険事故で別の保険受取人が保険金を受取る場合:贈与税
    4.保険契約者と被保険者が別の人(保険事故の内容、保険受取人は問わない)の場合:贈与税
    2の場合保険受取人に相続税が課税されるのですが、死亡保険金は一度に受け取る金額が多額になるため相続人全員の保険金について「500万円 × 法定相続人の数」で計算した控除があります。なお、相続人以外の者が②のケースで死亡保険金を受取った場合は上記の控除が受けられない上に、いわゆる「遺贈」とみなされるため税額2割加算の対象となります。

     

    退職金の税務

    ここからは退職金の税金について解説します。
    退職金の税金の取扱いは、受取事由により異なります。
    ①退職に伴う退職金の受取り:所得税の退職所得(他の所得とは分離して所得税計算します)
    ②死亡に伴う退職金の受取り:相続税
    死亡に伴い退職金が支給される場合本人が死亡して受け取ることが出来ず、別の人に支給されることから相続税の対象となります。退職金も死亡保険金同様一度に受け取る金額が多額になるため、退職金総額について「500万円 × 法定相続人の数」で計算した控除があり、死亡保険金控除とは別に計算します。
    なお、税法上の退職金は先述の通り退職金規定等に基づき支給される退職金だけでなく、有給買取金や退職記念品、功労金、社会通念を超える弔礼金など退職を理由に退職後3年以内に支給される一時金も退職金として取り扱います。

     

    生命保険と退職金制度を使った相続対策

    ここまで生命保険と退職金の税金の取扱いを説明しましたが、相続税の課税対象となる死亡保険金や退職金の受取りには「500万円 × 法定相続人の数」の控除があることからしばしば相続税の節税対策に活用されます。
    例えば、遺言代わりに現金を特定の推定相続人に確実に引き継ぐために生命保険を利用したり、オーナー企業で生前は利益を企業内に蓄え、相続時に退職金として遺族に渡したりするなどです。死亡に伴う退職金は相続財産となる株式の評価に当たり債務として扱われ、かつ、企業にとって経費となるため、株価引下げによる相続税の節税効果と会社の経費増加に伴う法人税の節税効果もあります。
    ただし、世間一般と比較しあまりに退職金が高すぎると、過度な節税(租税回避行為)とみなされ経費性の否定(損金不算入)をされる可能性もありますので、死亡退職金の支給額は、世間常識に照らして一般的な金額にするよう注意が必要です。

     

    おわりに

    今回は相続税の課税対象となることのある生命保険と退職金について相続税にとどまらず他の税金にも触れて解説しました。
    生命保険はもしもの時の経済損失の補填、退職金は勤務時の功労に対する報奨が本来の目的なのですが、税金が深く絡むことから、時として本来の目的の性格が薄い節税手段として利用されることもあります。筆者としては生命保険と退職金制度を本来の目的に適うかどうかを踏まえて活用していただきたいと考えております。過度な節税策を指摘されて追徴課税されると、かえって財産を失う結果になり本末転倒になりますので…

     

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