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【令和4年6月リライト】相続税解説シリーズ⑥|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

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2022/06/22

目次

    はじめに

    相続税解説10回シリーズ第6回目の今回は有価証券の相続税です。有価証券を保有しているケースの多くは、資産家か会社のオーナーです。有価証券は保有目的によって評価方法が異なり、その方法も複雑です。ですが、この解説では難しい計算方法の説明ではなく、ざっとこんな感じで評価されることを理解していただけるよう、なるべく細かい点は触れず、概要を中心に解説します。もしもの時の有価証券の評価についてイメージいただけますと幸いです。
    なお、各回のテーマは以下の通りです。今回リライトした内容は令和4年6月現在の法令に基づいています。
    第1回 基本事項
    第2回 納税義務者
    第3回 準確定申告
    第4回 現金・預金
    第5回 不動産
    第6回(今回) 有価証券
    第7回 退職金・生命保険
    第8回 その他財産・債務・葬儀費用
    第9回 税金計算・控除制度
    第10回 事業承継特例
    番外編 贈与税

     

    対象となる有価証券

    対象となる有価証券はいわゆる「有価証券」といわれるもの全てであり、具体的には株式、債券、投資信託です。所有している有価証券が円貨建てか外貨建てかを問いませんし、証券口座が国内か海外かも問いません。
    投資信託に限らず「信託」といわれるものについては、分配金や精算利益を得る人いわゆる「受益者」課税の原則があります。このため、受益者の死亡に伴い別の方が受益者となる場合新たな受益者が相続人または遺贈受取人とみなされ相続税が発生します。なお、当初から委託者と受益者が異なる「他益信託」の場合、委託者が財産を証券会社や信託銀行などの受託者に信託した時に受益者に財産を贈与したとみなされ贈与税が発生しますので、合わせて押さえていただきたいところです。

     

    相続税計算における有価証券の評価

    有価証券や信託の相続税について解説しましたが、税金計算に当たり実際にどのように評価するのか解説します。
    (1)上場または店頭公開されている株式・公社債・投資信託:上場している金融証券取引所等が公表する相続日(被相続人が亡くなった日)の最終取引価格(終値)×株式数(相続日当日に取引がなかった場合は相続日前後で最も近い取引日の終値)
    ただし、個人間売買または負担付贈与以外で取得した上場株式の場合、株価変動を和らげるため相続日の月前過去3か月間の月間平均価格の最低価格が相続日終値を下回る場合はその最低価格を用います。

    (2)取引相場または気配値のない株式:後述します

    (3)取引相場または気配値のない公社債:発行価額に源泉徴収控除後経過利息の価額を加算した金額
    ただし、いわゆる割引発行など特殊条件の公社債は異なる評価方法を用います。

    (4)取引相場または気配値のない投資信託:相続日において解約または買取請求したと仮定した場合に証券会社等から支払を受けることができる価額

     

    結構ややこしい非公開株式の評価

    取引相場または気配値のない株式については評価方法が複雑なため別タイトルで解説します。
    まず、発行している会社の規模を「大会社」「中会社」「小会社」の3つに分類します。この分類は従業員数を主に業種・総資産額・売上高の4つで判定します。詳細はここでは割愛します。
    次に、3つの会社分類に合わせて1株当たり価額を以下の通り評価します。
    (1)大会社 類似業種比準価額(1株当たり純資産価額も選択可能)
    (2)中会社 類似業種比準価額×L+1株当たり純資産価額×(1-L)
    (Lは従業員数・業種・総資産額・売上高により変動)
    (3)小会社 1株当たり純資産価額((類似業種比準価額+1株当たり純資産価額)÷2でも可能)

    類似業種比準価額とは、自社の配当・利益・純資産(帳簿価額ベース)の3つについて同一業種の平均と比較した倍率に同一業種の株価をかけたものです。業種平均指標及び株価は国税庁から定期的に公表されています。
    1株当たり純資産価額とは文字通り一株当たりの純資産価額ですが、帳簿価額ではなくあたかも被相続人の相続時点での課税評価額を計算するかのように会社の資産と負債を相続時点で評価します。
    ただし例外的な評価方法もあり、同族会社の株主のうち同族グループに該当しない株主だった被相続人の場合、配当還元方式といわれる年間の配当額を基礎とした計算方法で評価します。また、いわゆる持株会社や土地等保有会社なども例外的な評価方法で評価します。

     

    事業資産の価値評価

    1株当たり純資産価額はあたかも被相続人の相続時点での課税評価額を計算するかのように、会社の資産と負債を相続時点で評価すると説明しましたが、ここでは他の回では触れることのない法人または事業を営んでいる個人に特有の資産の評価について解説します。
    事業者特有の資産のうち主なものとして、売掛金と棚卸資産の評価について解説します。
    (1)売掛金:元本金額+経過利息-破産などにより回収不能と見込まれる金額
    売掛金のほか未収入金や貸付金などの債権も上記の計算式で評価します。
    (2)棚卸資産 
    商品・製品: 相続時点における消費税抜の販売価額-(適正利潤+販売経費)
    原材料: 相続時点における仕入価額+引取運賃
    半製品・仕掛品::上記の原材料価額+加工費
    ここで棚卸資産に含まれるものについて補足しますと販売目的で保有している資産がすべて含まれ、例えば分譲用の不動産や建設中の建物も棚卸資産として取り扱い上記の通り評価します。

     

    名義株ありませんか?

    有価証券も他の資産と同じように実質的な保有者に対して課税されます。いわゆる名義株といわれるもので、かつての商法で会社設立に最低7人の発起人が必要とされていたため、数合わせのために名義だけ借りたケースが多いです。
    名義株かどうかの判断は、出資払込や贈与の状況、議決権行使の状況等を勘案し、名義人が株主としての実態があるかに着目します。例えば被相続人の妻名義の株式があるものの、夫婦が同一生計で株主として権利こうした事実がわかる資料がなかった場合、妻名義の株式は被相続人の名義株と判断され、相続税の課税対象となります。また、遺産分割の際相続財産なのかどうかが不明確になり、遺産分割トラブルの原因になることもあります。
    現在の会社法では最低株主数は1名のため、もしもの相続の前に株主名義を実質的な株主の名義にあらかじめ変更することも相続対策になります。なお、名義書換えにより株式の譲渡や贈与とみなされ課税されるのではないかと不安になる方もいらっしゃるかと思います。もし、名義株の名義変更を検討されるされる際は、あくまで実質的な株主への名義書換えであることを疎明できるようにすることになります。

     

    おわりに

    今回は有価証券の相続税について解説しました。非公開株式については計算方法が複雑ですが、生前から株価に影響する論点を押さえて節税対策をすることができます。この点は他の相続財産と比較して予防策を打ちやすい相続財産といえます。
    なお、株式について相続から遺産分割協議で相続先が決まるまでの間各法定相続人の準共有財産とされ、議決権や譲渡などは法定相続人から代表者1人を決めて行使することになります。むろん、代表者が単独で権利行使できるわけでなく法定相続人全員の過半数の同意が必要ですので争いごとにならないよう十分な注意が必要です。

     

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