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【令和4年6月リライト】相続税解説シリーズ⑤|札幌で税理士・公認会計士に無料相談ご希望の方は熊谷亘泰事務所へ!

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2022/06/21

目次

    はじめに

    相続税解説シリーズ第5回目の今回は、相続税の話題としてよくのぼる不動産について解説します。相続税の基礎控除額が最低3000万円であることから相続税がかかるケースとなることが多いのが、1件の価格が高価な財産である不動産所有者です。不動産は生活の拠点、商売の拠点、賃貸、投資など様々な目的があり、価値も立地やその時々の情勢で変動するため評価が複雑な資産でもあります。今回は不動産の相続税の中で特によく話題になる論点に絞って解説します。
    なお、各回のテーマは以下の通りです。今回リライトした内容は令和4年6月現在の法令に基づいています。
    第1回 基本事項
    第2回 納税義務者
    第3回 準確定申告
    第4回 現金・預金
    第5回(今回) 不動産
    第6回 有価証券
    第7回 退職金・生命保険
    第8回 その他財産・債務・葬儀費用
    第9回 税金計算・控除制度
    第10回 事業承継特例
    番外編 贈与税

     

    課税対象となる不動産

    相続税がかかる不動産は、被相続人が所有していた土地や建物は勿論ですが、借地権や占用権など不動産に関する権利も対象となります。実質的に不動産を使用する権利が不動産本体とは別に相続税の課税対象になることから、所有者とは異なる人が実質的に使用していた場合でも不動産本体については所有者に課税されます。なお、ここでいう所有者の判定は不動産登記簿上の名義で判断します。
    近年、相続した不動産について相続人が所有者変更登記をせず数年そのままにした結果持ち主不明の空き家となり、区画整理や不動産売買の障害となっているケースが増加しています。この空き家対策の税制については後述します。万が一変更登記を失念した場合、相続税は遺産分割協議の結果(協議をしていない場合は法定相続割合)ベースで各相続人に課税され、相続後の固定資産税も各相続人連帯の納税義務が発生します。また、死亡した人が名義上の「所有者」であるため、相続した不動産の売却・譲渡が事実上困難になります。こうしたトラブルを回避するためにも相続した不動産は忘れずに変更登記しましょう。

     

    配偶者居住権

    借地権や占用権などの不動産に関する権利も相続税の課税対象と申し上げましたが、平成29年に民法大改正があった際に新たに設けられた権利が「配偶者居住権」です。配偶者居住権とは、配偶者が被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合に、その居住していた建物の「全部」について無償で使用及び収益をする権利(民法第1208条1項)と定義されています。
    平成29年民法改正前ですと建物の相続は建物の所有権を相続する形でした。ところが、配偶者が住み続けるために配偶者が建物全部を相続するため、遺産分割において代わりに被相続人の現金預金を子に相続し配偶者の生活資金が無くなるケース、一方で子が建物を全て相続して配偶者の生活場所を失ったり、不動産の処分がうまく進まないケースがありました。そのために居住する権利を建物の所有権とは別に創設されました。この配偶者居住権は配偶者が亡くなるまでの間存続し(民法第1310条)、配偶者が亡くなった後子などに相続されることはありません。配偶者居住権に関しては登記をしないと相続当事者以外の第三者に権利を主張することが出来なくなりますので、登記忘れにくれぐれもご注意ください

     

    相続税計算における不動産の評価

    不動産及び不動産に関する権利に関する評価について解説します。不動産の評価は種類によって異なる評価方法があります。以下、主なものについて掲げます。
    (1)土地
    ・路線価のある地域:路線価方式を適用し、相続時直近の沿道路線価と土地の形に合わせて評価
    ・路線価のない地域:その土地の相続時直近の固定資産税評価額に基づいた倍率法で評価
    ただし、貸地の場合は後述(3)または(4)の評価額を控除し、配偶者居住権が設定されている家屋が建つ土地については後述(6)の評価額を控除します。
    (2)家屋:相続時直近の固定資産税評価額で評価
    ただし、配偶者居住権が設定されている家屋については後述(6)の評価額を控除します。
    (3)借地権、地上権:(1)の土地評価額×一定の借地権割合または地上権割合
    (4)定期借地権:借地権者に帰属する経済的利益及びその存続期間を基として評定した価額によって評価
    (5)貸家などの賃貸建物:(2)の家屋評価額×(1-一定の借家権割合×賃貸割合)

    (6)配偶者居住権
    ・配偶者居住権本体:(2)の家屋評価額×(1-((耐用年数-経過年数-見込余命年数)÷(耐用年数-経過年数)×見込余命年数に応じた法定利率による複利現価率)
    ・配偶者居住権の設定されている建物が建つ敷地の利用権:(1)の土地評価額×(1-見込余命年数に応じた法定利率による複利現価率)

     

    小規模宅地等の特例

    先ほどの評価の解説で、土地は相続時直近の路線価または固定資産税評価額で評価すると申し上げました。宅地であった場合これらの評価を用いることにより、周辺の土地需要が高まり地価が上昇傾向にあると評価額が異常に高くなり、相続後も住宅用地として使用しようとしている場合相続税の負担が多額になって今後の生活に支障が出る可能性が高まります。
    そこで、宅地に関しては一定の面積を限度に評価額を減額する特例があり、これを通称「小規模宅地等の特例」といいます。具体的な割合についてはこの記事では割愛します。確認したい方は下記国税庁HPリンクをご参照ください。
    この特例は必ずしも相続当事者の住居用である必要はなく、一部家内事業用や賃貸用の土地でも適用になる場合があります。また、この特例は一定の面積を超えた宅地の場合、一定の面積を限度に適用されます。
    国税庁HP No.4124相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

     

    相続人が住まない家の対策

    冒頭に述べましたが近年相続後住む人のいなくなった住宅が長期間放置され、所有権不明のままとなり、不動産の活用に支障をきたすケースが増加しています。そこで、平成28年4月よりこうした空き家を減らし不動産の有効活用を促進するため、いわゆる「空き家特例」が創設され、令和5年12月31日までの空き家及び当該空き家のある宅地の譲渡まで適用されます。
    この特例は相続直前まで被相続人が暮らしていた土地及び建物について以下の要件をすべて満たす場合に相続税ではなく、譲渡時の所得税譲渡所得から最高3000万円控除される特例です。
    1.昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
    2.区分所有建物登記がされている建物でないこと。
    3.相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
    この特例は被相続人が生前要介護認定を受けやむを得ず介護施設に入った場合、介護施設にいた期間も被相続人が居住していたとみなして適用を受けられる場合があります。
    なお、相続した土地や建物を3年以内に他の者に売却した場合、相続税のうち土地や建物に対応する部分について譲渡時の所得税譲渡所得から控除することができ、この控除に関しては適用時期の期限が設けられていません。

     

    ちょっと特殊?農地の相続

    相続税における不動産の特例は住宅だけではありません。筆者の所在する北海道では農業経営者が広い土地を農地として所有しているケースが多くあります。広大な農地を相続し多額の税金がかかると、相続後の農業経営を圧迫し結果として農業後継者不足の加速を招きかねません。そこで、農地の相続にも特例があります。
    具体的には、被相続人の死亡に伴い農地を相続する場合や生前に農地を後継者に一括贈与し受贈者が贈与税の納税猶予を受けていた場合に、土地を相続した後継者の相続税のうち「農業投資価格」と呼ばれる一定の価格を超える部分の相続税を一旦猶予し、相続した後継者の死亡時や後継者の後継者に農地を一括贈与した時などに猶予された相続税が免除されます。
    農業を永続的に続ける前提での特例ですので相続時に離農する場合は相続税がかかりますし、相続後途中で離農した場合は猶予された相続税が遡って課税されます。なお、生前に農地を後継者に一括贈与し受贈者が贈与税の納税猶予を受けていた場合、猶予されていた贈与税は相続時に全額免除され生前贈与された農地が相続財産とみなされて上記の農地相続特例の対象になります。

     

    おわりに

    今回は不動産の相続税について解説しました。不動産は用途によって評価が変わり、特に建物は築年数の経過とともに評価額が下落する傾向にあるため、よく節税商品の対象となります。しかしながら、不動産の購入には多額を伴うため、ある程度の収益性がないと節税効果以上に不動産に関する出費が多く期待された効果が帳消しになることもあります。不動産による資産運用をご検討されている方は相続時の税金メリットのみにとらわれず、不動産運用による増収効果をよく見極めることをお勧めします。
     

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